勝手に他人に譲るってアリ? 忘れ物を取り返すことは可能か

【相談者:20代女性】
彼とデートで行ったお店に、うっかり傘を忘れてきてしまいました。いつもビニール傘を使っている私を見かねて、彼がプレゼントしてくれたブランドの傘でとってもお気に入りでした。

しかし、しばらくいいお天気が続いていたので気づいたのは1週間後……。急いでお店に連絡をしたのですが、なんと「取りに来ないので他のお客さんにあげてしまった」というのです。

私が忘れてしまったのだから、もう取り返すことは出来ないんでしょうか?

a 法律上、取り返すことは可能ですが、特定が困難な場合が多いかもしれません。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。

傘を忘れたりなくしたりしたことがない人はいないのではと思うくらい、忘れやすいものですよね。

でも大切な人からのプレゼントということで、忘れてきたこと・他の人にあげてしまったお店の対応にとてもショックを受けられていることかと思います。

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(1)お店に忘れ物を預かる義務はないの?

さて、そもそもお店には忘れ物を保管する義務はあるのでしょうか?

『遺失物法』という法律があり、お店などの施設で落とし物を拾った人は、拾った物を施設占有者に渡さなければならないとされています。

落し物を受け取った施設占有者、つまりお店は、落し物を善良な管理者の注意を持って保管をし、落し物を速やかに落とし主に返すか、警察署長に提出しなければいけないとされています。

そのため、いったんはお店が忘れ物を預かる義務はありますが、お店が保管をし続けなくても警察に渡してしまったとしても適切な対応をしたことになります。

なお、警察に渡された落し物は、3か月保管されますが、落とし主がわからないときは、落し物の種類・特徴、落し物が拾われた日時・場所が公告されます。また、インターネットでも同じ情報が公表されていますので、確認してみましょう。

ただ、傘などの日常生活は、公告の日から2週間以内に落とし主が判明しなければ売却できるとされていますから、早めの問い合わせが大切ですね。

(2)勝手に人に渡すなんて違法じゃないの?

遺失物を横領する、つまり占有を離れた他人のものをネコババすると、『遺失物横領罪』という犯罪で違法になる可能性があります。

今回の傘は、落とし主の占有を離れた物ですが、あくまでお客さんの物で、お店のものではありません。

ですから、遺失物法に従って、お店は落し物を落とし主に返すか、警察署長に渡すまで、善良な管理者の注意を持って保管しなければいけません。今回、警察にも提出していないので、落とし主に返すまで保管をしていなければいけないはずです。

それなのに他のお客さんにあげてしまったとのことですが、少なくとも、お店は傘を忘れた人とあげた人が違うことをわかっていたはずです。

とすると、お店は傘が自分のものではないことや処分する権限もないことを知っていながら、落とし主以外の人にあげてしまったのですから、『遺失物横領罪』になる可能性があります。

(3)渡した相手から取り返すことは出来ますか?

でも大切なものですから、お店の責任追及の前に、落としたものを返してほしい! が一番の願いですよね。

今回も傘を持っている人に返還を請求できると考えられます。

まず落とし主は、落とした日から2年間、落とした物の占有者に対して、『民事訴訟手続き』によって、落し物を返すよう請求することができます。また、その物の所有者なので、無権利で自分のものを持っている人に返せと請求することができるのが大原則です。

しかし、動産には、『法律上即時取得』という制度があります。

これは他人の所有物だったとしても、受け取ったときに、他人の物であると気付かなかった点で落ち度がなかった場合には、受け取った人は適法にその物の所有権を取得できる制度です。

しかし、元の所有者が盗難・遺失によって占有を失ったときは、即時取得が成立する場合であっても、例外的に落としたときから2年間返還を請求できます。

今回は、お店の物と言ってプレゼントしていた場合は、受け取った人に即時取得が成立する可能性はありますが、落として占有を離れてしまった物なので、返還を請求することができると考えられます。

なお、落し物が遺失物と知らなかった質屋等の販売業者に回ってしまったときは、代金を払わなければいけないことがありますので、注意しましょう。


プレゼントをなくしてしまうと本当にショックですよね。

法律上は返還の制度はあるものの、現実的には第三者の手にいったん渡ってしまうと、今誰が持っているか特定できないことも少なくはありません。

傘のような日常品は、対応が遅れると売却されてしまうこともあります。

大切なものは肌身離さず持ちちゃんと管理をすること、また、落し物・忘れ物には早めの対応をとることが一番大切ではないでしょうか。

●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)

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